「各国より選ばれし選手諸君・・・ようこそBF(バトル・フィールド)世界大会へ・・・」街のあちこちに設置されたスピーカーから、執行部の声が聞こえる。この地には、魔法ギルド、農業ギルド、商業ギルド・・・国債取引所、ダンジョン転送所など数々の建物が集中する。そう、ここで行われるのは市街戦。今宵はBF開催とあって、全ての店が扉を固く閉じる。興味本位の観客の皆様は離れた方がいい・・・怪我したって保障はしないぞ・・・今宵は新月。幸いここには沢山の明かりが灯っているようだ。それが吉と出るか凶と出るかは・・・選手次第だろうな・・・
シファネ選手(ガレーナ代表) vs 才谷梅太郎選手(ボルホコ山代表)フレイザー選手(カイゼルオーン代表) vs 鳴雨緋河流選手(ジグロード代表)カイ=ウィスパード選手(プリエスタ代表) vs アルバイン・Z・ロウ選手(ガレーナ代表)
「試合期間は9月24日まで。それまでは、この市街地から出ることは<死>を意味しますのでお気をつけて。華麗なる惨劇を・・・BFギルド前市街戦 ――――― 開 幕 ――――!!」
〜「いかに格好良く負けるか」を目標に、「魅せる」事をテーマにした秩序ある戦闘RP(ロールプレイング)〜各国から選手が出てきますので、執行部が組み合わせを決め、指定された相手と1対1の戦闘RPを行うイベントです。・10日間の戦闘であること。・登録票を提出し、登録票に無い技・魔法の使用は禁止であること。・勝敗がなく、カッコイイ負け方を追求する。詳しくはHPがあるので、そちらを御覧下さい。(携帯不可)BF(バトル・フィールド)HPhttp://www.globetown.net/~bfworld/
ここの会場スレッドには、選手・執行部以外のレスは無さならないよう、お願い致します。また、応援スレッドが出ています(出ます)ので、応援はそちらにレスして下さい。試合が後半になりますと、一番カッコイイ試合を決定するスレッドが出ます。どうぞ、御投票下さいませ。尚、選手にはここで初めて対戦相手を知りました。即興RPを選手に課しております。選手はそれぞれあまり面識の無いであろう人と対戦しています。メッセや伝言などでの打ち合わせを行ってはいけない事になっておりますので、御了承下さい。また観客の皆様は、そんな条件の下で選手が戦っている事をご承知の上で御覧下されれば幸いです。
良く訪れる見慣れた街並み――。だが、今夜には常の喧騒は無く、静けさの中、遠巻きに見守る人々の囁くざわめきが、不意に立ち昇るだけに留まっている。静かなる雑音の中から、ふと自らが話題とされた会話が聴こえてくる。くすりと小さく笑みを浮かべてから、朔の夜空を見上げる。輝く星空、屋根も無く…。翼羽ばたかせる事を邪魔するものは少ない。今日は、踊るように歌うように、存分に戦えそうだ。大きく翼を広げ、魔力を高めていく。旋律重ねた羽根達が、そよ風になびき、小さな音を奏でる。涼やかなりし風鈴の音色…。過ぎ行く夏を想い起こさせる鈴鳴りは、それよりも更に熱き戦いへの始まりの序曲――。
街・・・人々が行き交い、生活する無くてはならぬ場所。普段なら、雑踏の中に生きている事を誇示するかのように人々の活気やざわめきがあるだろう。だが、今はその面影は無く、世界は静寂とすべてを包む夜に彩られている。在るのは宵の闇と無限に広がる星空、そして鈴虫の奏でる甘美なる旋律のみ。「・・・鳴雨緋河流・・・、如何様な人物か・・・。」今宵、静寂を彩る舞闘の相手の名を反芻する・・・。世界大会に出る程の剣客なれば、その腕は尋常ならざる物やも知れぬ。ならば―――相手にとって不足は無い。逸る気持ちを抑え、そっと目を閉じる。闘いの幕開けに思いを馳せるように・・・・・。
そう、今日は久しぶりに一日休日を貰って調味料とかお酒とか…とにかくウチに足りないものを買いに来たんだがこの通り。「今日だったのか…知らなかった…」荷物は取り上げられ、登録票にて申請した物といつもの服装が残された。しかし…都合良く持っていたもんだなぁとか思う。いや、マジで。今回のフィールド…「市街戦…か…」とりあえず、相手が相手なので申請していた技の半分がおしゃかになりそうだ。(…よしカイさん発見)目で確認すると隠れた。市街戦…待ちの方が有利と見る。本音はちっと違うんだが…まぁこんな始まりもアリだろう。
「ここが…」手に携えたモップが、石畳に触れてかつん、と音を立てた。「こんなところに10日間も…」堅く閉ざされた扉からは、その奥に誰かがいると言われても信じられなくて。今、自分はたった一人だった。じっとしていたら、逃げだしてしまいそうだった。だから。「…そ、掃除でもしようかな…あっ、この窓こんなに埃が…っ、ああっ、あっちの玄関には蜘蛛の巣が…っ」窓枠についっと小指を這わせながらうめく。「良く見たら玄関におっきい蜂の巣があるし…蜂…あっ、ちょ、ま、待って…今これから掃除したり戦ったりしないといけないから蜂蜜取ったりしないからこっちに来ないでくださいあうう刺さないでーっ!!」
暗い暗い新月の宵の刻口には煙管、手には濁酒、腰に刀を携えし男派手な衣を身に纏い、微かに町の灯りが照らす道を、しゃらんしゃらんと飾りを鳴らしひた、ひた、と歩いて往く。煙管を口から離しふぅ、と息を吐く白煙がその薫りと共に風に散ってゆく薄く煙で濁った視界を上へと持っていってみる澄んだ空に輝く何かが見えた、星だろうか、或いは―『さてと・・・そろそろ行くかな』そう言って煙管の灰を落とす。穏やかな風がまた吹いた。
耳を澄ませば、風の音が心地良い。それは、音天使たる自分にとって、コンディションの良さの現れでもある。「えっと、相手は才谷さん。才谷梅太郎さんでしたよね…」親衛隊、そして、ハルベルター。自分と同じ肩書きを持ちし者。実力の程は、判っている。意外と言えば、その肩書きを背負わぬこの場所にて相見える事となった数奇くらいだろうか…。気を引き締めつつ、装備を確認する。今回は、左の鞘に深蒼剣エターナルエンジェルを。右の鞘に星叡剣ゾディアックを収めてある。どちらも自らの体の一部とばかりに馴染んだ愛剣。解き放たれるその時を待ち、輝く魔力は静かなる前奏曲――。
暗闇の中、僕は目標を見据えていた(後ろから・・・・・・クックックッ、そんな無粋な真似したら、国中から粛清されるや)風を切る音と共にフレイザーの頬を掠め黒い何かが飛んでゆく「!?」彼が振り向くと、奇妙な格好の少年が居た黒いジャケットに同色のスラックス瞳も髪も漆黒で、指先の無いグローブも色は変わらない左腕には体格の小柄さとは裏腹に大身槍が余った右手には艶消しされたダガーが握られている妖しく光る槍と、銀に鋭く煌めくロザリオさえなければ闇に溶けてしまいそうだった
「フレイザーさんですね?」少年は不意に語りかけた「僕は・・・まぁ想像通りだと思うや」黒い刀身の短剣で、首を切る真似をして見せた僕は闘うべき相手と向き合った(慎重にいかないとな・・・・・・)それと同時に頭の中がスッと冷めていく感覚があった「行きますよ、狩の時間だ」お決まりの台詞を言うのと、右手の武器を投げつけたのは同時であったそして、そのまま後ろに跳び下がる(まずは様子見だ、相手の間合いや機動性、戦法を確認しなければ)
背後から飛び出ると左で指さしながらビシッと決めゼリフ。「さぁ、熱いバトルの始まりといこうか?土産というのもなんだけど…とっときな!」やや雑な右拳での一撃は振り返った相手にかわされ、更に脇を蹴られて吹き飛ばされる…こいつは面白い。「っくうぅ、やるねぇ…んじゃさっそくやろうか?」…いかんいかん、別の戦いが始まるところだった。しかしさっきからこうやって見てるわけだが…このままだと始まらないで私はただのストーカーっぽい人間で終わる気がする。タイミングを見計らって飛び出して…こう私の流れに持ってくることが必要だろう。さて…どうしたものか…
面倒なのでプロセスは省略させて貰うが…私の牙たる剣と右腕を融合させる。色々考えた結果、融着と呼んでいるこの姿…見た目は鋼鉄の拳具を纏ったような感じ。特殊武装があるんだけど…それはおいておく。この間のカイさんの行動は…想像にお任せしようと思う。とにかく、幾多の苦難を乗り越え…今、私はここにいる。「カイさんこんばんは…ンじゃはじめたいと思います。」今回出場しているなかでは…このBF、私は結構数をこなしている方でその度に泣かされてきたんだが…残念ながら今回は執行部より私の方が一枚上手のようだ。「見切った!」この勝負…『萌えたら負け』……私だけ。
ぶぅぅぅぅん…何百もの羽音が追ってくる。「はっ、は…っ」ほんの2,3分ほど全力疾走しただけで、既に思考は停止を始めていた。膝はがくがくと震えている。走り始めた時は、今度から掃除をする時に、バケツの水は多めにしようとか、モップがけする時は腹筋に力を込めようとか、そんなことも考えていたが、今脳裏を占めるのは一つのことだけだった。(もう蜂蜜は食べないようにしよ…っ)住宅の密集地をひたすら走り続けていると、家の角から人影が現れた。(今のは…)「ろ…ロウ様…っ?」確かに対戦相手であるアルバイン・Z・ロウの姿がそこにはあった。右手には何やら金属製の、
「篭手…?…ってあわ…っ!あ、あのロウ様っ、い、今戻ってきますから少し待っててくださわーっ!いい加減許してくださ…蜂蜜は止めてジャムにしますから――…っ!!」声と羽音は夜の闇に吸い込まれていった。彼方で、どこかに何かがぶつかる音がしたような気がした。30分後。「こ…こんばんは…です…っお、お待たせ…しま…した…じゃ、じゃあ…い、いつでもどぞ…です…っ!」全身をまんべんなく埃と木の葉と煤と灰で汚し、顔には蜂除けのつもりなのかバケツを斜めに被りながら、ロウの前に現れた。「あっ!ちょ、ちょっと待ってください…髪が、バケツに挟まって…あたたたた…っ」
背後に殺気を感じた刹那、頬に何かが掠り、焼かれたような熱を感じる。振り向いて相手――少年、自分と同じか少し幼いぐらいの――と正対する。「最初の挨拶が、不意打ちなんて趣味が悪いですよ。」闘いの場に相応しくない、柔和な面持ちで話しかける。だが、その目は既に獲物を捉えた狩猟者のように抑えこんだ殺気で研ぎ澄まされていた。鳴雨緋河流の声と共に、短剣が直撃軌道で飛んでくる。(往くぞ、我が魔剣フォマルハウト・ドラグーン…。)スタンスを広げると同時に右腕と、そして腰に下げていた剣が消えた。魔力で加速した抜刀術、そして甲高い金属音と共に短剣を弾き飛ばしていた。
forbidden device・・・・・・起動認証、魔力収束と同時に顕現Materialize phase・・・・・・非実体化、光の翼にて開放In-and-out power・・・・・・余剰魔力にて運営 allclearフレイザーを中心に収束された、自身の魔力、周囲の魔素が一種の魔法空間を作りだす。空間が狭まるに連れ、フレイザーの背後に漆黒と純白、正反対の色彩を持つ翼がその輪郭を露にした。「カイゼルオーンチャイナ聖教団大祭主フレイザー…参る。」抜き身の剣を構え相手に向け疾走、翼を羽ばたかせて更に加速する。(相手の腕を見極める、まずはそこからだ)一足飛びに地面を踏みきると、速度を殺さず剣を振り下ろした。
「不意打ち狙いなら当ててるや」不平を漏らしている場合ではなかった相手は殺る気に満ちている(聞いてないぞ)どうやら、面白がる余裕は無さそうだ「ジグロード攻撃師団長、ヒカル。受けて立つ」二つ名は本来もっと長いが、略させてもらった(執行部も面白い相手をぶつけてくれるや)考えながらも、体は自然に動く僕は槍を横に薙いだ(間合いが近すぎるぞ?)フレイザーとの間合いを更に少年は縮めていた(それでは柄しか……)フレイザーが驚愕の表情を浮かべた
左から右へ放たれた横薙ぎが、入れ替わっていた緋河流の体が右に急旋回し、腕を180度捻っていただから実際に来たのは石突による右から左への脇腹を狙った突きであった一歩踏みとどまるフレイザーしかし直後に槍の柄が脇腹に直撃し、その反動を利用して緋河流は後ろ跳びで再び間合いを確保する(機動性がかなり有る……マズイや…推測するに同じく魔法戦士系。主な間合いは近接…ただし魔法による遠距離への対処も考えられる)舌打ちを僕は漏らしたもう不用意には近づいてはきまい(さて、どの程度手の内を見せておこうか……)
静かで良い夜だ。梅太郎はそう思った、だがじきに幾人もの兵達が戦いを繰り広げ、騒々しくなる事であろう。『やれやれ…こういう日にゃ戦よか酒のほうが似合うのに』軽くぼやき空を見上げた。すると一人の天使の少女が視界に入る。その広げた翼は淡い光を帯び、新月の暗き宵の空を優しく照らしていた。『例のアイドルのお嬢さんか…』頭をぽりぽりと掻き見上げ、そして考えてみた。ごくごく状況を見れば解る事。さてどうやって空に飛んだものか。梅太郎の背中は気のせいか幾分かの哀愁を帯びていた
──どうしよう──率直な感想だが…きっと他の対戦相手も私と同じくこの場に居たらそう思ったはず…いや、思わせて欲しい。このフィールド内には既に殺気がぶつかりあう様子すらあるというのに何だろう?…このほわほわした感じは?目を閉じて…開く。瞳にうつるのはバケツと格闘している女性。此方へ向かってくる無数の気配は蜂…だと思う。これ以上延びたら全部持ってかれると判断、それにまだバケツと格闘してるし…「さて、折角だし…パッパとね。」ニヤリと笑みを浮かべると右手の甲部分の形状を変える。そして右腕を大きく振ると変化した部分の先端から鋼糸を射出した。
そのまま右腕を上げ、頭上で拳を円を描くように回すとちょうど螺旋を描くように鋼糸がドンドンと伸びていく。私は自分がこれだ!と思う長さになるまでそれを続けると今度はカイさんのいる方向…よりも少々上の方を狙って鋼糸の先端を飛ばす。狙いは…蜂とバケツ。邪魔だし。いつまでもカイさんに相手をしてもらえそうにないし。愚痴はこのくらいにして鋼糸を動かす…私自身が舞えば、鋼糸も舞うように動く…蜂をたたき落とし、バケツはスパッとまっぷたつ。腕を引くと無音かつ一瞬で回収される。「さぁ」今度こそ「いきますか」鋼糸を伸ばす。解き放つ。
「へえ・・・・槍であんだけ小回りが効くのか・・・面白いカードだ。」手で脇腹を擦りながら、感心するように呟く。(これぐらいの痛みなら、ほっとけば消える。)真っ黒なロングコートの埃を払う仕草、そして…。フレイザーの姿が幾重にも重なって見える。正確には、独特の歩調が織り成す空気の流れが起こす現象に過ぎない。決して攻撃向きとは言えない…、風のように攻撃を逸らし、水のように的を絞らせない。それはまるで舞いのような、完全な受身の構え。翼から舞い散る粉雪の如き光の粒子が艶やかさを添える……闘いの為に生まれた舞踏。(積極的に責めるのも良いけど…相手の攻撃見てからでも遅くはない。)
近くに遠くに、戦いの音が聴こえ始める。自分達もと探し舞って程無く、眼下に梅太郎の姿を発見した。「漸く、お会いする事が出来ましたね…」頭を掻きつつ思案する梅太郎から、少し離れて着地する。「今回は宜しくお願いします♪魅せる戦い、しましょうですね…♪」まずは礼節を、そして敬意を。ぺこりとお辞儀をしつつ、心地良く透き通るその声を響かせた。「わたしの想いが、力となる。わたしの歌が、心を導く――。風鈴の音天シファネ、行きますっ!」手慣れた口上を述べた後、再び、翼を揺らし宙に舞う。まず始めるは、様子見。梅太郎の悩みは、此方も考えていた事。背負いし哀歌、どう拭うのかと――。
「あたた…え、枝毛になっちゃう…っ…あ、あれ…?」微かな音が通り過ぎると、頭を抑える圧迫感が消滅する。直後、体を狙った第二撃が掠めるだけで済んだのは、「あぁ…バケツが…元に戻るかな…」と言いながら、屈んでバケツだったものを拾おうとしたからだった。「…っ」偶然に感謝する暇もなく、左肩の袖を浅く(だと思いたい)切り裂く痛みに、悲鳴を上げなかったことだけは僥倖だと言えた。息を吐き切ってしまえば動きが止まる。その隙まで見逃してもらえるとは思えないし―――そんなことまで彼にさせてしまうくらいなら、もう自分は棄権するべきだろうから。
左手でモップを抱き抱えるようにして、ごろごろと無様に転がる。頭のどこかで、もうこのメイド服は使い物にならないんだろうなーと考える自分がいて、しかしそれはまだ冷静さがわずかでも残っている証拠でもあった。右手を懐に忍ばせ、愛用の雑巾を取り出す。どちらの方向に彼がいるのか正確なところはわからなかったが、起き上がる時間を一瞬でも稼げれば―――「いきます、雑巾ぶーめらん…っ!!」回転しながら勢い良く飛ぶ雑巾を視界の隅に捕らえると、立ち上がりながら最後の息を吐ききる。「このぶーめらん…避けられますか…っ!」(…投げるだけで、戻ってこないけど…)恥ずかしいから、そこまでは言わない。
「カモフラージュか?」僕は呟いた(狙えば狙うほど外れるタイプだな)同時に、反射的にするべき攻撃をしていた「ムッ」フレイザーがうめく多少は予想していたが、実際には規模が凄まじかったからだ「多いな」空を裂き、無数の黒き刃が襲い来る槍を地面に突き刺した緋河流は、両手で絶え間無くダガーを飛ばし続ける数撃てば当る、だ申請済みアイテムの黒いジャケットには隠しポケットが数多く存在し、簡単には使い切れない量のダガーを保有している「!?」歩を止めるフレイザーブレも同時に収まった
全く当ら無かったので飛んでくる短剣を無視していたのだが……(艶消しの黒だとっ!)短剣の柄、その末尾に鋼鉄の弦が組み込まれているそれらは既にフレイザーの周りを取り囲み、先端である短剣が地面に突き刺さる事で張りも充分だった「プルゥートさん、借りますよ」僕は、自分しか理解できない事を呟いた両腕を少年は交差させ、手元の糸がその動きを伝達するフレイザーは少しでも時間とスペースを稼ぐべく後ろに下がった空中に浮かんだまま腕を振り、横から迫ってきていた弦を愛刀で切り裂く着地すると即座に横へ転がり、攻撃のラインから外れた
一連の動きを確認し僕は槍を手に取り速攻追撃をしかけた少年が先程見せた小回りの理由をフレイザーは理解した「そういう事か」「そうですよ」少年は答えた瞳は血の様な緋色に煌き、背中に漆黒の翼を生して技@・翼発現。出し入れ自由の翼が生え、羽ばたきでの急旋回・加速・姿勢制御による機動力向上使用中は瞳が緋色に飛行は相手ができないとマズイので今回は無し神速の動きで緋河流は強襲する三段突き相手は最低限の動きで回避そのまま横薙ぎに移行剣で受ける黒コート反撃に移ろうとするフレイザーその膝に足の裏で前蹴り、反動と羽ばたきで後ろに跳び間合いをまた離す緋河流
「今回は宜しくお願いします♪魅せる戦い、しましょうですね…♪」突然急降下してきて目の前に現れた少女はそう言うと一礼しすぅっと息を大きく吸いなんとも綺麗な声でこう言った「わたしの想いが、力となる。わたしの歌が、心を導く――。風鈴の音天シファネ、行きますっ!」『・・・・・あ。』声かける暇もなくまた少女は空へ。様子見のつもりだろうか。梅太郎はまた面倒くさそうに頭をぽりぽりと掻いた。そして溜息を一つ。『行きます、って言ってそうくるのか・・・。仕方のないお嬢さんだな…。待つ女は嫌いじゃないが』とりあえず状況を確認する。市街地、周りは建物だらけ。相手は天使。
『そっちがそう来るなら・・・こう行くしかないでしょ。』―たんっと大地を蹴り上げる。ボルホコ山で鍛えた筋肉は常人のそれを遥かに上回る能力を持つ(多分)とん。小さな一軒家の屋根に足を乗せ、少女のほうを振り返る。『ま、こうでもしないと、な…』腰に刺した刀【斬鉄剣】を抜き、少女へと向ける。『女に刀向けるのは気が引けるが・・・しょうがないか!!』そういうと梅太郎は刀を構えた。
ようやく…少しだが私にも飲み込めてきた。一つ、カイさんの装備、技などは掃除関係のモノから予想した方が良いということ。一つ、カイさんは非常に真面目でありこの場合、侮ってかかっているのは私の方だということ。一つ、既に知ってる人も知らない人も大夫私のことを誤解していること。いや、最後のはちょっと困るな…ここで恋人とかがいる人はその応援を背に何とか精神面を持ち直すんだろうけど…私はそーいうのいないからなぁ。あ、ちなみに雑巾は回転にあわせて絡め取ることで無事キャッチしてあるわけです。こう…くるくるっとね。また投げられてもアレだし後で返そう。
そうだ、遠慮しちゃいけない…たぶんカイさんが目の前だと『言葉遣い』が変わるくらいのスイッチは入らないかもしれない…だが、「このままじゃあまりにも過去の対戦相手に悪いよな」覚悟は…まぁ半々か…真上に放たれた鋼糸…それが自らの意志で行っているかのように、ロウの…武装された右腕に巻き付いていく…右腕はコイルのように見えなくもない。何かって?まぁ急かすなって、これからさ。懐から一枚の紙を取り出す…呪術的な模様…その中心に『雷槌』の二文字。「ええっとなんだっけか…(中断)…とにかく、名を借りて符に問う…お前はなんだ?」意志ある言葉に後押しされ符は目を覚ます
それはあまりに名前負けした…申し訳程度の雷だった。使う者が使えば違うんだろうが…おあいにく様、私は『名を借りて』つかったんでね…本来の威力とはほど遠いソレが私の上げたままの右腕に落ちる。てか、直撃。まぁ大丈夫だけどね。この鋼糸…雷系の力を吸収して増幅する素敵な力がある。そんでもってこの右腕とあわせて…『雷の鉄拳』といったところか。さて、すっかり前置きが長くなってしまったし…駆けだす、左右に身体を振り…狙いを定めさせずらくし…一気に詰める。「触れるだけで良い」私は雷を纏ったその手を…最短距離で伸ばした。
翼の生えた相手を見、ふと呟く。「…同類か、ならば陸戦にこだわる必要はない。」口元に笑みを浮かべると、背中の翼が耀きを増し、足が地面から離れ虚空に揺らめく。翼が揚力を発生させる、それは人間1人を浮遊させるには十分な力だ。(陸戦タイプと思ったが…、ドッグファイトができるとはますます面白い)もう遠慮はいらない、と言わんばかりに翼の形状が変わっていく。周囲の魔素、そして自分の魔力を使い質量補填、それまでの羽根の束のような小型翼から完全な翼へと変貌を遂げる。modeselect 接地戦モード・・・cancel 高機動モード・・・online「確かに速いけど…、何もあなたの専売特許じゃないんですよ。」
翼は既に魔力を放出して推進力とするスラスターと化していた。重力の呪縛、それをも味方にし降下による速度を速めていく。刻一刻と地表、そして鳴雨緋河流の姿が大きくなる。剣を担ぎ、一撃の為の力を貯める。自身の膂力、降下によるエネルギー、それらを殺さずに完全に近い形で振り下ろす。それがこの攻撃の最大の強みであり、すべてだった。相手を間合いに捕らえた刹那、剣を見舞った。想像を絶する風斬り音と剣速に鳴雨緋河流の表情が強張る。だが、紙一重でかわされ地面が隆起するように抉りとられた。(ちっ、外したか…。)今正に繰り出された槍を蹴りで弾き飛ばすと、近くの家の屋根に着地した。
「此処は、女だからと言って、遠慮される場ではありませんよ?」言葉を紡ぎつつも、ふと気付く。自分とて、すぐに手を出さず、空に身を躍らせたのは、梅太郎が対空戦闘能力を持ちえるのかを知りたかったからだった。それも、手の内を探ろうと言ったものではなく、成す術を持たないとなれば、一方的な有利となってしまわないかとの躊躇からのこと。「どうやら、わたしも遠慮しちゃってたみたいですね…」ひとつ先に言った事は、自分の行動にも当て嵌まる。今は、そのような迷いを持つべき機会ではない。全力で戦おう。相手の極限を引き出させる為に。進まぬ序奏を終わらせて――。
「では、お互い遠慮無しと言う事で…。今度こそ、行きますっ!」気付き、そして決意する。その健脚で軽々と飛び乗った屋根の上で、刃を抜き放った梅太郎に対し、同じくの本気を促しながら、魔法詠唱を始める。自らを取り巻く風の流れが変わり、金色に輝く髪を、左側に大きくスリットが入ったスカートの裾を、お気に入りの羽根飾りを、優しく揺らしていく。『空を切り裂き、鋼をも断て! 三剣音斬!(トリプル・ブレード・サウンド・スラッシュ)』魔力を右手に集中し、腕を横薙ぎに振るう。広げた指の間に風が生まれ、三本の真空刃が一直線に舞い飛ぶ。斬鉄の刀を構える梅太郎に対し、放たれるは断鋼と紡がれし詠唱――。
僕は、執行部を粋と見るか単に意地が悪いと見るかで少し迷ったよりによってこうまで似たタイプを組ませるとは!(僕はついている。僕の防御力じゃさっきのを食らえばアウトだった……しかし1度回避できれば考察できる)「その技、名前が無いならS,L,C,ダイブにしませんか?」減らず口を叩く少年「もう当たりませんけどね」僕は喋りながらも再び考えた(単純に加速を付け、重力も加えた高速の斬撃らしい)そうであるならば……(魔力による付属効果、結界による防御や魔法を纏っての攻撃力増加等は無い)弱点は有る!(自分の苦手な攻撃を人にする事になろうとは)僕は苦笑した
緋河流が自慢の神速で駆けた「当たらないのは僕が戦術的一時撤退をするからです!」フレイザーは一瞬呆気にとられた緋河流が背を見せて後退したからだ「ふざけないでほしいなぁッ!!」再び加速しての斬撃をしかけた(かかったや)加速しての一撃。僕にだって少なくない言うなれば勝手知ったる技だ(僕だったら、仕掛けた際にどう対処されたらマズイ?)答えはかなり前に既にでていた極限加速による攻撃その欠点の一つは速度故に急に止まる事が難しく、障害物に当たった場合に受ける衝撃と負荷が大きい更に、視界が悪い
フレイザーの攻撃が緋河流に当ったと思われた瞬間(笑った?)フレイザーが幽かな気配を感じた攻撃のくるタイミングそのものは良く解る重圧と風の感じでだ僕は見計らうと、振り返らずに上へ跳んだ羽ばたきも利用しての上昇へ、咄嗟にフレイザーは対処しようとしたが間に合わなかった硬い何かと激突した「この程度で自爆する程軟な技ではない」フレイザーは叫ぶ激突したが、技の威力が障害物に勝り貫通したのだただし、かなり進んでしまっていたが(明るい場所だな)フレイザーが状況を確認する間もなく何かが飛んで来た姿が多重に見える歩調で対抗しようとしたが飛んで来た物はなんと……
流動体の物だった姿がダブって見えようとお構いなく、扇状にそれは広がり、熱い飛沫がフレイザーを襲った「くッ」追撃が更に入り、瓶とその中身直撃する。ダメージは無いに等しく、匂いから中身は酒だと解る一般家庭を突然悲劇が襲った突然壁がブチ破られ、金髪の青年が乱入してきたかと思うと「もし賞金がでたらそれで弁償しますから……許してください」黒い少年が空いた穴から入り、前述の台詞と共に夕飯の野菜スープ(推定)の鍋を強奪それを黒コートの青年に投げつけると空かさず棚のワインやブランデーを手に取りスープと同じく投げつけた
「調子に乗るな」フレイザーはこの時漸く気づいたこの狭い室内では速度を出すのが殆ど不可能な事に「ダメージは殆ど無しか」少年は呟くと、穴から出て行く追って外に出る相手は空中に居たドッグファイトが始まるのか?虚空へと上昇するフレイザーどこからか先程の家屋から盗んできた皿を数枚取り出し、槍で一斉に割る緋河流破片は重力とフレイザー自身の加速を味方につけ黒コートを襲う「厄介な……」剣で薙ぎ払う。当れば無事には済まない僕は短剣を右斜め前方に投げたワイヤーを街灯に引っかけそこを支点に弧を描くフレイザーを更なる危機が襲う死角より短剣が弧を描きつ来る緋河流得意の多角攻撃だ
起き上がって、モップを左手から両手に構え直そうとしていた時には、目の前の青年は既にいくつかの動作を終えてしまっているようだった。そういえば詠唱のようなものが聞こえた気もする。詠唱ということは、魔法か、それに似た何かを行使する為ものだということくらいは理解できた。これから自分に向けられる攻撃が具体的に何なのかわからない以上、それを待ち構えるというのは危険過ぎた。「受ける」ということは相手の攻撃を防ぎ切るか、後の先を取ることのできる時にすることであって、それができないなら、最初から守りに入るべきではない。そして、(どちらもできないな・・・こっちから行くしかないよね・・・)
普段誰かを睨むことなどまずないから、ちゃんと表情を作れているかどうか自身はなかったが(「逆に困ってる顔になってたりしたらどうしよう・・・ロウ様に聞くわけにもいかないし・・」)。それでも精一杯を目に込めて、「行きます・・・っ!」と、睨みつけようとした刹那、一瞬視界が明るく染まって、思わず目を閉じる。目を開けると、高く掲げられた彼の右腕は煌々と輝いていた。その輝きは先ほどの詠唱によるものであることは明らかで、金属を両断する鋼糸が魔力で強化された今、その威力は全く想像が付かなかった。こちらがわずかな動作を終える間に、その何倍もの動作を終えてしまう。
(雑巾、避けるまでもなかったんだ・・・もし濡れてたら・・・関係ないよね・・・)奇襲や油断ではどうにもならない絶対力の差。もっとも、彼は決して油断などしないだろうが。「これが、ロウ様の力・・・」それでも、何もしないということはできなかった。自分のせいで、もう随分と彼を退屈させてしまったから。「せめて、一瞬でも・・・対等に・・・っ!」モップを腰溜めに構え、駆ける―――と、その時にはもう、輝く右手は眼前に迫っていた。視界を埋め尽くす光の瞬きに、「綺麗・・・」と呟いたのと同時に。視界は暗転した。
それは偉大な才能であろう。外見が可愛いとかだけではこの男がこんな気持ちで戦うこともなかったはずだ。少なくとも今まではなかった。それはなんと偉大な才能だろうか。攻撃スピードにおいて他の追随を許さぬこの男が見せた…「ガードが甘ぇっ!」戦うための心とその意志を表現する言葉は…「綺麗・・・」と呟いた彼女の言葉を耳にすると…再び自分の中のどこかへと飛んでいった。(恥じることも…引け目を感じることも無い…どんな結果であろうと…それにこの試合は既に…ね)それは尊敬すべき偉大な才能、天からの授かりもの。
現実は変わらない…変えられるほど強い時の力を持っているのならこんな風に私はなっていない…手は触れるだけ。雷がカイさんを貫くのみ。触れた手で、純粋に腕の力だけで押し飛ばす。そういえば…市街戦だということを忘れていたが、かなり無理なことをしたからか…飛距離が出なかったのははたしてどちらにとって良かったといえるだろうか?等と考える。新月の夜…無数にある明かり…その下で、壁により掛かりながら私は自分の対戦相手をじっと見つめていた。この時何を考えていたかは正直わからない。少なくとも…立ち上がってほしいとは誰よりも思っていたが…ね。
高機動状態では普段なんでもない(踏んだら痛いだろうけど)皿の破片も相対速度によって兇器と化す。更に背後から迫る短剣、周囲の物を利用した良い多角攻撃だ。「SLCダイブ…その心は?30秒以内に400字詰めの原稿用紙3枚で表現して。」とかのたまうもつかの間、思考を迫り来る物体に戻す。(全部撃ち落してると隙がデカイし…使うか。)『天使の羽根よ…我が矢となりて其を滅ぼせ…フェザーストライク』(登録技の1つ)翼から光の粒子が爆ぜた。指向性を持った粒子で出来た10基の羽根が射出されフレイザーの周囲を囲う。狙いは直撃する物と背後に迫る短剣にのみ、それ以外は当たらないか、十分回避できる。
スナップアップ(機軸を強引に逸らす)と同時に羽根が曳光を洩らし飛んでいく。一発は短剣、4発は皿とその向こうの鳴雨緋河流を狙う。短剣、そして破片郡に直撃した羽根は周囲を照らす爆炎となってその破壊力を顕現した。破片は消滅し、短剣はワイヤーを断ち切られ明後日の方向へ飛んでいく。そして何か板に突き刺さった。…そこには『魔法ギルド』と刻ざまれているようだ。(……………見なかった事にしよう。)気を取り直して爆炎の上を飛び越える。空中で浮遊する鳴雨緋河流との距離を一気に詰めた。再度スナップアップ、流れるように位置をズラし的を絞らせない。同時に軸線上に捉えた相手に羽根の四連斉射を見舞った。
「そんなものでやられるわけないや。」槍を構え、羽根の撃墜にかかる。あの技量ならば撃墜はそれほど難しくはない…だが。槍と羽根が交差する瞬間、鳴雨緋河流の目前で羽根が炸裂した。爆炎による被害は恐らくないだろう、しかし狙いは別にある。残った最後の羽根を射出し、相手に陽動をかける。そして自分はその羽根と反対側に廻りこみ、爆炎の中に佇む相手を捕らえていた。
(直撃しなかった?)僕の防御力なら十分危なかった(・・・・・・しまった、どこだ?)見失ったのか?羽の気配がするしかし相手の気配は感じない「・・・・・・・・・くぅっ」短剣を数本、ワイヤーを付けたまま斜め上に飛ばす放物線を描いて落ちてきたそれ急旋回をする緋河流をフレイザーは冷静に観察していた勢いに任せて突撃する無謀さは無い緋河流の動きに合わせて糸が周囲を薙ぎ払う羽は落ちたしかし隙ができた
「喰らいなさい」フレイザーの袈裟斬りが当たったかに見えた瞬間だった刃を受けた緋河流の姿が霞の様に散ったシャルデルン・ゲシュペンスト&シュレック・シャッテン登録技・気配も像も無い、気配だけ。像だけ、像も気配も在る計四種類の残像を組み合わせた波状攻撃&緊急回避以下S・G&S・Sと表記「これは?」フレイザーに直後反撃が襲いかかった四種類の残像が、下から上から横から際限無く薙ぎと突きを繰り出す反撃しようにも残像による攪乱とリーチの差からままならない(空中なら全方位から多角攻撃をしかけられる・・・もらったぁっ!)
シファネ選手の放った風の刃の先に居るはずだった才谷選手の姿が消えた・・・!?風の刃は消え去り、才谷選手のいた位置に豁然と姿を現したのは・・BF執行部長レイラールだった。「執行部長が試合を止めるって言うの?無粋ね・・・」シファネ選手の言葉に、白衣の執行部長は肩を竦めた。「皆様選手は試合終了までそれぞれの会場から出られません。それはお判りですね?こちらの手違いで、才谷選手にかけた会場に束縛する魔法が切れてしまって・・・再度かけ直しも出来ないんですよ。申し訳ない。」
レイラールは腕につけていた執行部を現す腕章を外し、手に九節鞭を握った。「よって・・・ここから貴女のお相手は私となります。」九節鞭を一振るいすると、近くの壁に大穴が開く。レイラールは空中のシファネ選手を見上げ、執行部の大人しい顔つきから、選手の顔つきに変えていく・・・釣りあがった目、威嚇の表情。「私は執行部長。貴女の弱点も知っている。貴女は不利だ。貴女はここで戦わず、不戦勝を得る事もできる。私としてはそうして頂きたいのだが・・・。」
「・・・ぽっきーは、もう、これ以上食べられない―――」固い地面の上に、気を失ったまま横たわった状態でむぐむぐと呟く。目を閉じたその表情は、どことなく満足そうではあった。「―――こともないですけど・・・あ、でも今はおやつの時間じゃないですし、でも・・・あわ・・・っ!?」バネのように体を起こして辺りを見回そうとすると、体全体にかすかな痛みが走る。「っ・・・あ、そか・・・ロウ様の攻撃を受けて、それで・・・」意識を無くしていたのがどれくらいの時間なのかはわからないが、辺りを覆う夜の濃さに変わりがないのを見ると、どうやらそれほど経っていないようだった。
ロウの姿は、そんな闇を押し退けるように壁際にあった。こっそり盗み見ようとして―――起きた時にあれだけ騒いでおいて今更盗み見るも何もないなぁと思い直す。もう目が合ってしまっているし。すぐ近くにモップがあったので、掴んで立ち上がって、体についた埃を一応、両手で払う。(本当に一応だけど・・・)壁に寄り掛かったままの彼に正対し、モップを真っ直ぐに構える。1分、2分、とそのまま見つめ、「・・・やっぱり、勝てないですよね・・・」そのまま、降ろす。「・・・今は、まだ」悔しくないはずはないのだけれど、それでも。精一杯の笑顔を作って、深くお辞儀をした。「・・・降参しますっ」
「あややっ、そうだったのですね…」執行部長レイラールから状況の説明を聴きつつ、突然のアクシデントを戸惑いつつも理解する。更に、自らが代行選手となる事、不戦勝を選んでも良いとの事を告げてくるレイラール。「今のお言葉が、執行部長としての提言でしたのなら、素直に従う事も出来ましょうけど…、そうでないなら引く事なんて出来ませんよ?」威嚇と警告。明らかに戦士として、自分の有利を宣言してのものだ。そう判断しつつ、答えを返す。「それに、執行部長様と戦えるとの機会…。大変、名誉な事と想います♪」世界大会という大舞台で、最もBFを知る者と戦える。貴重な好機と言えなくも無い、突然の即興曲――。
「確かに、わたしを研究し尽くされたも等しい訳ですね…」登録票を受け取った人物。此方の手の内を全て知る訳だ。「でも、その点で遠慮されるつもりはなさそうですよね?勿論、遠慮される事もありません…♪」不安は無い。登録したその時よりも強くなった自分を、一言では書き切れない技の奥深さを引き出せば良いのだから…。「見せてくださいませ、本物のBFと言うものをっ!」その言葉を戦いの合図とし、右手から、再びの三剣音斬を放つ。つい先程も見たばかりと、軽く避けるレイラール。だが…。「もう一発! 三剣音斬ッ!」余裕こそが最大の隙と、左手より新たな三剣音斬が繰り出される。油断ならぬ追復曲――。
(全部空蝉か、あるいは全部実体か。)残像とは思えない見事な連携で4人の鳴雨緋河流が襲いかかる。横からの薙ぎ払いを剣と翼で切り払い、上下の憑きをどうにか回避する。とはいえ少しずつ被弾し、細かい傷が増えていく。(このままじゃラチがあかない…、それならっ!!)『舞うは破滅への序曲…顕れよ、断罪の炎…』突如、残像とフレイザーの間に膨大な量の火焔が顕れる。その炎は徐々に収束していき、1つの形状を取った。【バーニングエンジェル】(技2)天使を思わせる容姿を持つすべての悪を滅する断罪の炎を召還する。天使に抱かれた者は何人たりとも、その業火から逃れられない。
『…往け、我が守護天使…バーニングエンジェル!!』その体内に膨大な熱量を内包する天使が、残像の前に立ちはだかった。天使の器に納められた炎が暴れ狂う、それは脈を打つようであり生命が宿っているようだった。「どれが実体かわからないなら、すべて消し去れば良い。」天使が…舞った。迸る業火、そして陽炎をも纏う高熱とともに。その絶対的な破壊の権化は、容赦なく残影と、その中の鳴雨緋河流に襲いかかった。
(召喚焔撃?まさかここまで……)ここまで、の続きを考えている余裕は無かったあっという間に四体の残像が掻き消された「四種類……なるほど、四体とは言ってなかったな」フレイザーが苦笑した4人の緋皮流を焼き尽くして尚、天使は止まらなかった現れる緋河流の像を早々に火葬し続けた天使が不意に大きく動いたある方向、そこへ一直線に翔けた「逃げてたのか」フレイザーは呟いた
―策士策に溺れる「しかし……偶然か、必然か…」僕は呟いた壁に凭れ掛かった状態でだ余裕が無い「このままじゃ、負けるや」しかし少年とてただ指を咥えて敗北を待つつもりは無い狭い路地裏に隠れ、壁と壁の間に短剣を刺しワイヤートラップを仕掛けていた「そこかっ」見つかるのが思ったより早かったや…しか……天使を象った焔が、少年の不意をついて現れた少年は、自らが作った罠の方向に逃げざるを得ず、全身を刻まれながら進んだ正に策士策に溺れる、だ(アレを…使うしか無いのか?)S・G&S・Sで逃亡を計る中、緋河流はある決意をしていた
シファネ選手の放った三本の刃をギリギリでかわすと、飛び上がった空中で体を捻る。そこに再び襲ってくる三本の刃・・・!!!「―――っ!!!」レイラールは咄嗟に両腕で顔を庇う。しかし体は風の刃の圧力に負けて建物の壁に背中から激突する。(いってぇ・・・・)背中の痛みに顔を歪めるが、庇った両腕は先の国内BFで無くしている為に義手。風の刃による傷は無く、すぐにまた壁を蹴り、空中へ舞い上がる。「・・・では、参ります・・・」
空中で体勢を変え、壁を蹴り、九節鞭は身の一部のように様々に動く。四方から九節鞭を縦横無尽に放ち、シファネ選手をじわじわといたぶるように、細かい傷を負わせていく・・・レイラールは何かを狙っていた・・・(捕まえたっ・・・っ!)シファネ選手の右足首に九節鞭が絡まる。そして空中を常とする彼女を地面に引きずり下ろすっ!そう、これがレイラールの狙いだったのだ。「私は華麗な戦いを<見る>のが好きです。ですが・・・私の戦いは<野蛮>なのですよ・・・」地面に下ろしたシファネ選手を今度は見下ろし、レイラールは微笑んだ・・・
「・・・降参しますっ」深くお辞儀する彼女の姿に何と声をかければ…いや、深く考える必要はない…少なくとも考えて戸惑ってしまうことは余りに…そうだな…無理してこっち側でいる必要は…もうないからな。ぽんっと軽く頭に手をやる。「そうだなぁ…今度はお茶会の相手の方が私はうれしいな。あ、もちろん二人とかではなく皆…いろんな皆を呼んで…さ?」しゃがみこんでニっと笑いかける。しかし…何か忘れていたような…なんだっけか?うーん…こう、このまま忘れると後で酷い目にあうような気がしないでもない…いかん…早く思い出さなくてはその時微かに聞こえた声に思わず反応する私。
「おぉぉさぁぁけぇぇぇぇっ!」血の気が引く思いというのは…こんな時にするものだろうなぁ。いや、よくある気が…。うん、さっさと取りに行こう。「あのー」── 略 ──「で…ですね…」説明しよう!回収された荷物は運ぶ途中で大事なお酒を落としたばかりか「ロウたんが勝ったら返します」とか萌え死を見越した発言をした執行部長レイラールの手によって事実ごと隠蔽されたのだが…「というわけなのですよー」が、目の前にいる私の主人…ナノカさんには通じなかった。その後、私が魔法でプリエスタ方面に飛ばされたとかなんとか。ちゃんちゃんっ
今のはフェイント。ここだけの話あの方の飲むお酒の量は半端ではなくリュックやそこらのもので運べるようならこんなとこまで買い付けには来ていない。今回のは私の寝酒。ナノカさんの分は『発注』してあるので一週間もしない内にお城の方に届く…きっと知らないで見たら勘違いするような量が。では実際の方をどうぞ。「は?お酒ですか?最初からご主人様の分なんてありゃしませんよー」あ、物欲しそうな顔してる…「えー……ん、セバスちゃんあっち見て」素直に指さす方向を見た。「げっつ」…酒を奪われた。…後は意識がないんだ、次の場面…病室だったから。
「ぁっ……きゃぁぁっ!?」九節鞭と言う相対慣れない武器を躱し切れず、足首を絡め取られる。地面に背を強かに打ち付けながら、翼に走る痛みを堪える。「野蛮ですか…。野蛮なのは、好きじゃない…ですっ!」引き倒されたままの状態で、右腰の星叡剣ゾディアックを素早く抜き、右足を解放させるべく剣を振るう。レイラールは巧みなスナップを効かせ、九節鞭を手元に引き戻す。攻撃を外した切っ先は石畳を削り、火花が夜闇に美しく映える。「ふぅっ、吃驚しちゃったです。さて…」武器破壊とまでの贅沢は叶わなかったが、絡み付きから逃れは出来た事に安堵する。間合いを取りつつ立ち上がれど、鞭音の変奏曲は続く――。
「どうするですかね…」変幻自在の動きにより、多方向から襲い来るレイラールの九節鞭。剣撃なれば捌き切る自信もあるが、鞭と言う受け難い武器に、普通では対処し切れはしないだろう。「それじゃ、普通を越えるとしましょうか…?」ならば、普通でなければ良い。最も単純な答えに達しつつ、ゾディアックを鞘へと収めつつ、幾分かの距離を取る。すうっと一呼吸。風を受け止めるように掌と翼を広げながら、音の魔力を集めていく。「此処に集いし音達よ…秘められし5対の音切り羽根達よ…」シファネは小さく呟き、音と光で形作られた音天使の翼を呼び起こす。淡く輝く音羽根が舞い、音色煌めく祝福曲――。
―歌声が響く。『静かな星空 忘れぬ輝き夜闇の中にも光は届く―音天使の旋律。『訪れる明日 今に感じる?訪れる未来 此処に感じる?―その音色のように、シファネは揺れる。『信じる心を護りたい…信じる強さを護りたい…―九節鞭が空を切る。『星々に想い重ねて 優しさを誓い誇り高く戦おう―綿毛の如く捉え切れぬ動きで躱す。『祈りを紡いだ旋律の中包まれるわたし 歌い続ける―歌声は続く。『朝日を願いしわたしの歌が祝福の光届けるように明日に捧げるわたしの歌が今、未来の地図へと変わる…!―未来を変える聖戦の祈り。星を導き時を指し示す歌声、音天聖歌――。
逃亡に近い形で離脱する緋河流その後はロクデモ無い事しかしなかった農業ギルドに隠れ、実や加工品のジュースをフレイザーにぶつけて果汁塗れにしたり人質(一般人)をとってみたり(結局フェザーストライクを使用されアッサリ鎮圧された)公園の噴水に潜んで不意をついたり(背後から溺れさせようとして水の中に引き込むも、アッサリ脱出される)何だか書くのもウンザリするような、勝負を舐めきっているような態度であるしかし、無策の行動では無い僕は一息ついた漸く引き離し、時間を稼げたここ中央広場に辿りついた僕は最後の罠を仕掛け終えたそう、ジグの人間としてこのまま終わる訳にはいかない
「戯れは済んだか?」冷ややかな声だった僕には誰だか解っていたS・G&S・Sを発動させ即座に緋河流は動いた多くの像がフレイザーを取り囲むが、裏を返せば少年が弱っている証拠だった。その多くに気配もある己の仕掛けた罠。それから受けたダメージは深刻だったフレイザーは機械的に捌いていく一つ、また一つ緋河流の像は崩れていく「もう諦めろ」もはや戦闘力の差が、決定的なのだ
「まだ終れない」緋河流の翼が大きく変化してゆく肩幅を軽く越え、地面スレスレにまで伸びる双眸はより鮮やかな緋色に変わり、いよいよ鮮血を連想させる申請技・暴走。闇天使の能力を120%以上開放。パワーと速度が上がるが防御力は下がり、己の力によって傷つく五分を越えると自動で止まるS・G&S・Sのテンポが跳ね上がった血飛沫がフレイザーを濡らす程激しくフレイザーは焦った緋河流の像は数える程しかないだが気配も像も無い攻撃が異常に増えていた「かつて深紅乃悪魔と呼ばれた身。無事には帰しません」覚悟を決めた僕は、相手の青年へと向いた
「吾が手に戻れ、焔纏う天使よ。」天使が忽然と姿を消し、周囲はまた満天の星空に覆われる。(…限界が近い…。)口から漏れてきた血を勘付かれないように拭う。傍目にはフレイザー優勢、だが度重なる高速機動、後を顧みない連続的な魔法に身体が悲鳴を上げていた。弾薬庫には、持って後2,3発の全力攻撃分しか残っていない。勝負の時は近い…、恐らく相手もそう考えているだろう。そして、その時はきた。変異していく鳴雨緋河流の身体、そして増える像、血の雨。そして何か決意した表情…最後の闘いの幕が…開けようとしていた。
「さて、そろそろ決着といこうか…。」魔力が体内を循環する、それは血のように全身を駆け巡った。翼に循環される過程で先の戦闘で消耗していた翼が修復、より実体化されていく。前方に手をかざすと、フレイザーの身体を刻印の刻まれたリング状の力場が覆いはじめた。それに促されたように、翼がその形状を変化させる。羽根一本一本が鋭利な刃物に、総じて見れば羽根の先端に無数の刃を繋ぎ合わせたようにも見える。【斬翼天翔】(技3)音速を凌駕する速度で相手に突撃し相手の払い抜ける技。翼が擁する無数の刃と手に持った得物による多重攻撃。「残像は見飽きたよっ!!」
一回転と同時に剣と、翼から延びた刃が周囲の像を切り刻む。刃の硬質的な印象とは裏腹に刃走りは滑らかそのものだった。(持ってあと3,4分…それまでにカタをつける!!)虚空を蹴って相手へと飛翔する。速度が跳ねあがり、亜音速に達していく。接近ざまに一閃、だが身体能力を強化した相手に軽々と防がれた。連続して軌道修正、身体に激痛が走るのも気にせず、斬撃の嵐を加えていく。「くっ…ここまでとは…。」全方位からの連続攻撃、相手はその大半を防いでいる。互いの手数は互角、膠着状態に陥ろうとした時、状況は動いた。フレイザーが反転、距離を取ったのだ。この闘いに終止符を打つために…。
(互いに高機動で助かるのは、時間を高密度に使える事だな)別に、嬉しくもないが……(…逆に嫌な所は考えている余裕が無い所だな)考え中に距離を取ったフレイザーへ三段突き、そのまま横薙ぎに移行例のコンビネーションで迎え撃つ緋河流しかし今度はそこで止まらない更にやや下降しながら左回転の急旋回で無理矢理袈裟斬りに移行回避されても回転を止めない一回転し、裏拳の要領で右横薙ぎへそれも回避された
(左腕と左肋骨の7…いや6、5番が少しイカレタ)体の負荷による弊害(ここから先、空振りすらダメージになるな…)自滅しようとも、攻撃は加えねばならない何を考えているかは判らないが、動きを封じなければ牽制で放たれた刃の翼を、闇天使は指先の空いたグローブで受け、払い流した(申請アイテム。中に砂鉄が詰っていて、拳や掌を作ると固まって即席の鈍器兼手甲になる)「ジョーカーを切らせてもらいますよ」
「これは……」「召喚は僕も得意なんです」フレイザーの周りに360度取り囲んだ槍の大群が現れた申請技。幾千幾万乃河流。亜空間に所持する大量の槍を召喚し、オールレンジ攻撃を放つ。出た後の槍は敵味方関係無く再利用可「虐殺魔法、幾千幾万乃河流」虚空より出でし刃達はフレイザーを襲う更に緋河流は複数の短剣を投げ、槍の柄をワイヤーの支点にした多角攻撃も加える「……超多角攻撃」身体を少年は捻った右肋骨が悲鳴を上げながらも「受け切れますか?」止めと言わんばかりに渾身の突きを放った
槍の対処におわれるフレイザーへ駄目押しの一撃が「?」途中で失速した集中力が途切れたのか、槍の召喚も止まった(あれ・・・・・・?)反撃を受けた事態を把握できないうちにだどうにか咄嗟に右腕へ十字傷を負わせる事はできた(どうにか、下準備は完了したか)墜落しつつも、短剣を投げ幾つかの外灯を破壊する残った明かりは僅かだ(空中戦は負けらしい・・・・・・だが、次にくるであろう追撃さえ凌げれば・・・・・・)不着地時、受け身を取った少年の目はまだ死んでない「次が・・・最後の攻防か」
全方位から無数の武器が飛び交う。すべてがすべて当たるという訳では無いがその数は十分脅威だ。闇雲に叩き落すだけでは必ず当たってしまう…それならば。微妙な均衡で自分に向かう武器の束、そのバランスを崩せばある程度は崩壊する。「砕け、龍の爪…ドラグネススクラッチ!!」剣を振るう毎に不可視の刃が一体となって振り下ろされる。同時に、翼から発生する刃を縦横無尽に走らせ、槍を切断、もしくはその軌道をズラしていく。軌道を外された槍はワイヤーと絡まり連鎖反応的に絡み合っていった。【ドラグネススクラッチ】(技4)闘気を収束させて放つ斬撃。斬る瞬間最大5つまで不可視の剣を発生させる。
不意に軌道を逸れ、夢遊する一本の槍が向かってくる。その槍にはワイヤーに繋がれたナイフがあったが、当たるわけでもないので放置っしていた。だが、それは不規則に動く周囲の槍と衝突しフレイザーへ襲いかかって来た。「ぐっ!?」槍が足に、ナイフが左腕に突き刺さる。鮮血が虚空に滴り落ち、腕と足が地からを失ったように垂れ下がる。「邪魔だ!どいてろ!!」鮮血と共に槍を引き抜くと、それを前方の、そう今正に猛威を振るおうとしている相手へと投げる。横の回転を加えられた槍は、前方の槍の大半を絡み取った。鳴雨緋河流とフレイザー、二人の間には何も妨害する物はない。
「最後の決着と行こうか…。」痛みを堪え、正真証明最後の攻撃に出る。再度天使を召還、だが今度は蒼い…更に高温の炎で精製されている。天使は真っ直ぐに相手へと進撃していく。(これでダメなら負けで良いかな。)口元に笑みが浮かぶ。そして自ら、その天使の中に飛び込んだ。音速にまで高められた加速は、周囲に衝撃波を発生させ天使の炎の容姿を崩していく。先端が尖り、フレイザー自身の翼の型をなぞる様に炎が流れていく。炎と魔力がぶつかり合い、様々な色彩を描くその様は、鳳凰を思わせるものだった…。
「さて・・・」レイラールは適当な屋根の上で動きを止めた。掠めもしない攻撃に見切りをつけたのだ。「もうそろそろ時間ですね。」この辺を気にするあたり、執行部長である。「最後の一撃勝負といきましょうか・・・」レイラールは九節鞭の第二節に左手を添えて後ろに引き、腰を落としてシファネ選手に対峙した・・・これで・・・最後。
「判りました。此方も準備は万全です…」聴く者の心を鼓舞し、更なる力を与える音天使の祝福、音天聖歌。その歌声を自らに聴かせ、シファネは身軽さを、身体感覚を増していた。小手先の攻撃を躱し、大技との交差法を狙っていた折での申し出。シファネとしても、願っていた対峙である。「ですが、居合は得意ですから、ご注意をですよ…?」警告を口にしつつ、抜刀の構えに。左腰の深蒼剣エターナルエンジェルの鞘を強く掴む。今宵、初めて放たれる事となる慈愛の光は、何を秘めるのか…。後は、相手と同時に放つだけ。その一瞬を待つ無伴奏――。
静寂…。だが、張り詰めた瞬間。沈黙…。しかし、瞬きも出来ぬ時間。緊張…。そして、今まで流れた試合経過全てよりも長きに感じる数分が経過する。極限…。やがて来る移調。シファネは強く一歩を踏み出す。「神音の剣技…、貴方に見切れますか、防げますか…!?」跳躍と同時に羽ばたき。神音の魔力を伴わせて…。加速された前進で、一気に間合いを詰める。『我が剣閃は、音速をなお超えて! 音剣衝震斬!』一瞬の時も経たせずに繰り出されるは、音を切り裂く超速の抜刀術…!深蒼の刃煌めく剣閃、それは、刹那重ねし輪舞曲――。
「……涙が出てくるや」何が悲しくて、完全に回避できなかった召還焔撃を再び受けねばならないのだろう?しかも、一旦避わしただけでは消えないようだしフレイザーを下から見上げ、緋河流はため息をついたその間も相手は接近してくる「幾千幾万乃河流ッ」槍が規則的に、縦に降り注ぐ並んだ槍は即席の盾となる「この程度では止められないぞ!?」槍の大群を突破した時、緋河流の姿は既に無く……天使は相手を自動追尾するようだが、それがアダになった緋河流は逃げる途中中央の噴水を通ったらしく、炎は消えなかったが発生した水蒸気がフレイザーの視界を奪った緋河流が最後のチャンスを得た
「僕の正式な二つ名は電光迅雷の車騎将軍」水蒸気が晴れてフレイザーが目にしたのは魔法ギルド前の宙に浮かぶ緋河流手にはトランプ―道化師のジョーカーを持っている「今から放つのは'僕自身の'最後の一撃」トランプを裏返し、再び表にすると柄が死神のジョーカーへと変化「クックックッ、終わりだ…天魔雷冥!!」申請技。天魔雷冥。十字傷を負わせた部分に冥界から召喚した弾速が速く威力絶大な十三の雷撃を収束して一点に叩き込む。反射や結界に弱い全魔力、全体力を消費し使用後は自動的に戦闘不能最凶災悪と造語で呼び悦に入る、最大の切り札―ガンバレ、お兄ちゃん♪不意に、妹の声が聞こえた気がした
(何故今聞こえる?)弾速が速過ぎる為、収束させるには成層圏ギリギリから召還させる必要があるから発動にはやや間が在る(有利な今な……ぜ?)緋河流の視界に地面が映った手にしていたトランプが深紫の火花―正確には放電に一瞬で焼き尽くされた様をフレイザーは目視した「クソッ」外灯は全て壊されたのか明かりは無い「散々濡らしてきたのは…血の雨も噴水も果汁も何もかも雷撃の為の伏線」フレイザーが覚悟した時だ肝心の相手が地面に落下した(消耗が激し過ぎたのか?……計算より早かったな…もう、限界か…)深紫の迅雷がフレイザーの周りへ無造作に、バラバラに落ちては地面を抉り、人工物を焼き尽くす
天魔雷冥は十三発全てが収束すれば相乗効果で消滅という桁外れの威力と貫通力を発揮する反面単体では瞬間的に焼き尽くす為持続性が欠如し相殺や結界に弱いしかし(もう、限界なのか)僕の体が急速に動かなくなりつつあった(ならいいや)このままにしていれば楽に……―ガンバレ、お兄ちゃん♪幻聴だろうが、再び妹の声を聞いた気がした無責任に言ってくれるや「ッッッッッッッォォオ!」意味不明の叫びと共に緋河流は立ち、左腕を突き出し、今度こそ完璧に倒れ伏した(クックックッ、ザマァ無いや)いつもの嘲笑混じりの冷笑を浮かべて
フレイザーは戦慄を禁じ得なかった恐らく―そしてその通りなのだが最後の動作により、雷撃がコントロールを取り戻し、収束した二発が彼に向かっていた「光速でか?」水蒸気で濡れた今なら掠っただけで感電するだろう魔法ギルド前にワイヤーが張り巡らされている更に、吊り下げられた看板の裏側へそれに連動した短剣がかくされていて、ワイヤーが切られると落ちてくるよう細工されているのだ戦闘不能になった緋河流を囮にしたニ重の罠だ短剣は死角になっているし、ワイヤーは色のせいで見分けがつけ難いこの為に外灯を潰して明りを消したのだ
緋河流は恐れた。天魔雷冥すら通じないのではとしかし、だからしかけた最後の仕掛けも意味をなさないかもしれない容赦無い雷撃が狩り殺るかもしれない罠に気づいた相手が解除するかもしれないだが、尊敬する傭兵は多少の不利は知略と覚悟で乗り切った尊敬する名も無い男は決して諦めず、死力を尽くした憧れる少女は常に不可能とも思える事をやってのけてみせるだから、結果を知る事はできなくとも緋河流は彼等と同じく在ろうと己の力に賭けた本人の知れないその結果はいかに?
シファネ選手はたった1つ計算が違った。レイラールの九節鞭には人を一撃で倒す力など無い。そう・・・レイラールはシファネ選手の一撃を、九節鞭で弾いた・・・!ただ、それだけだった・・・「私に、最後の一撃などないのです。私の言葉に騙されましたね?私はただ、防ぐ事、追い詰める事しか出来ないのです。」レイラールは執行部腕章を再び右腕につけると、笑った。「私は、選手にはなれないようですね・・・。」
シファネ選手がレイラールの喉元に剣を当てる。「これで終わりって言うわけ?納得いかないわ。」「・・・ならば、私を殺してどうしますか?」朝日が昇る。戦いの夜は終わった。ギルド前から飛び去るシファネ選手を見送って、レイラールは自分の手元を見た。九節鞭がひび割れ、右義手が完全に動きを止めてしまってる。そう、シファネ選手の最後の一撃を受けてレイラールはもう戦えなくなっていたのだ。(ハッタリがばれなくて良かったな・・・)―――レイラール執行部(選手代理)BF世界大会・終了―――
突如として襲いかかる二条の雷光。闇を切り裂くその禍禍しい光は、生物を殺傷するのに十分過ぎる威力を持つ。バーニングエンジェルと斬翼天翔、2つの魔力の作り出す障壁とて、耐えきれる保証はない。(維持できる時間も…数秒か、それならっ!!)その刹那、一瞬のうちに纏っていた焔が離散し周囲に爆ぜる。バーニングエンジェルを解除、その有り余る焔を雷光の迎撃に使ったのだ。焔の塊と雷光が衝突する。それは互いに秘める破壊の力を相殺しつつ、周囲を照らす爆炎となり、霧散していった。同時に翼から鋭利な刃の姿が消えていく。どうやら稼働時間を過ぎ、その権勢を留められなくなったようだ。
(チッ、腕が動かん。)相殺し切れなかった雷撃が腕に機能障害を引き起こしたようだ。他にも動かない部分がある、それは空気中を移動する電子の速さを如実に物語る。しかし、気に留める余裕はない。最後の最後、相手を把握、必要に応じては雌雄を決しなければ…満身創痍の身体を降下させつつ、そんな思いが脳裏をよぎる。魔法ギルドと家屋の密集する路地、そこに相手は倒れていた。とうとう翼も消失し、揚力を失った身体は抵抗もなく地面へと落ちていく。…何かが腕に触れた。連動して動くワイヤー、無音のまま、しかけられた罠の歯車は動き出す。フレイザーが鳴雨緋河流の傍に着地した時、その罠が牙を剥いた。
頭上の看板が二人目掛けて落ちてくる。大質量の看板の下敷きになればタダでは済まない。(死ぬ気か…?死んでも何もならない、残るのは残された者の悲しみだけというのに…。)突きの構えを取る。呼吸を整え意識を剣に集中させる…最後の力を振り絞るように。「光よ、御力賜わいてその権勢を顕わせ…切り裂け無音の闇、ディヴァインウェイブ!!」剣が看板に突き刺さり…白い筋と共に爆散した。【ディヴァインウェイブ】(技5)剣を突き立て、剣を中心に幾重にも重なる波紋状の衝撃波を発生。「もうカラッポだぁ…もう引き分けでいっか」鳴雨緋河流の横に大の字に寝そべると、それまでの激戦に幕を下ろした…。